原発大国のフランスと、1980年代に脱原発を決めたイタリア。欧州2国の廃炉の現場を歩くと、中央に振り回され、原発からの脱却に苦しむ地方の姿が見えてくる。 フランス東部アルザス地方オーラン県。2012年2月、県庁の庁舎前で、同地域にあるフェッセンハイム原発の廃炉に反対する人たちが抗議活動を展開していた。その2カ月後の大統領選で勝利することになるオランド前大統領は、国内58基の原子炉のうち24基の段階的閉鎖と、稼働する原発で最古のフェッセンハイム原発の早期閉鎖を公約に掲げていた。11年3月に起きた東京電力福島第1原発事故が、フランスの原子力政策を揺るがしたのだ。 不安が現実に 「私たちの地域を守る」。プラカードを掲げた人たちが、オーラン県庁前を行進した。「原発の閉鎖は私たちにとって死活問題だ」。住民男性は取材にそう答えた。抗議活動に参加した当時のフェッセンハイム市長は、30年あまり原発に支えら