立命館大学MOT大学院 テクノロジー・マネジメント研究科教授 After J-SOX研究会会長 田尾 啓一 国際会計基準(IFRS)の大きな特徴の一つは時価会計(公正価値)である。今回は時価会計の意味とその課題を明らかにしたうえで、時価会計のもとでのリスクマネジメントの重要性と情報システムによる対応について説明する。 「時価」を基に会計処理を実施 まず、時価会計とは何かについて簡単に触れておこう。時価会計とは、時価と簿価の評価差額を財務諸表に反映し、時価をベースに会計を行うことをいう。 金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号)では、時価を以下のように定義している。「公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配または指標その他の相場(以下、市場価格)に基づく価額をいう。市場価格がない場合には合理的に算定された価額を公正な評価額とする」。 時価には出口価格(売却時価)と