菅直人首相(当時)の要請を受けて中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)が全面停止して半年。10キロ圏に位置する同県牧之原市の議会が9月、浜岡原発の永久停止を求める決議を賛成多数で可決し、西原茂樹市長が「永久停止は譲れない」と表明した「牧之原ショック」は周辺自治体を今も揺さぶる。同市が原発容認から転換した背景には地元産業界の強い危機感がある。 牧之原市は人口5万人ほどの小さな町だが、広大な牧之原台地は静岡茶の主産地として知られる。約400キロ離れた福島第1原発の事故は、この茶産地を直撃し、茶農家は、放射性物質検査に追われた。ある茶農家の男性が「もう茶を生産するのは難しい」と語った声が忘れられない。 ◇スズキ会長が「移転を検討」 牧之原市は工業のまちでもある。市内には、スズキ、小糸製作所など大企業の工場が建ち並ぶ。そうした企業のトップも、原発リスクを深刻に受け止めていた。3月下旬、スズキの鈴木修会