白燐(はくりん)が皮膚に触れると、骨まで火傷を負うことになる。そしてこの粒子が燃えるとニンニク臭を発し、行く手にあるものをすべて溶かす。 そのことを、海兵隊第一大隊第一連隊兵器中隊第81小隊所属の兵長アダム・ドライバーは知っていた。2003年のある日、カリフォルニアでの訓練中に空を見上げたときのことだ。頭上高く炸裂した白燐弾の雲が目に入った。彼がするべきことは、ただひたすら走って逃げることだった。 人生で本当にやりたかった2つのこと ドライバーが海兵隊に入隊したのはその前年、18歳のときだ。高校卒業後、インディアナ州ミシャワカに住む家族の家の裏に部屋を借り、4Hクラブ(農村青少年の組織)の会場で芝刈りをしていた。俳優になりたいと漠然と思っていて、ジュリアード音楽院の試験を受けた。学業成績は確認されないと知っていたからだ。だが不合格となったため、ロサンゼルスへ行って映画界を目指すことにした。