この映画を観るにあたって、僕はニュートラルな気持ちではなく、相当に厳しい、つけられるだけの難癖をつけてやろうという気持ちで臨んだ。その結果、何か予期しないものが胸にこぼれ落ちてくるのなら、それだけ持って帰ろうと思っていた。 実際に観てみると、なるほどこれは美しい映画だった。ある種、宮崎監督にしか作れない美しい映画だと言っていい。けれど同時に、この美しさなら、「もういい」とも感じた。美しいものをあえて突っぱねてそう言うのではなく、自然に、どうしようもなく、「もういい」と感じてしまった。 この美しさなら、もういい。まして「千と千尋」や「ポニョ」で、見た事もないような新次元の美しさに引き合せてくれた宮崎アニメにして、今さらこれならば。 胸にこぼれ落ちてくるもの、はあった。それは主人公二人の愛の物語である。だがそれですら、恋愛の諸相を描き切っているわけではないというイチャモンは別にして、この映画の
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