九州大准教授 井上武史 フランスのオランド大統領は昨年11月のテロの3日後、上下両院を集めた合同会議で、非常事態に関する規定を憲法に盛り込む「憲法改正」を目指すことを表明した。だが、上下院の議論はまとまらず、今年3月30日、オランド大統領は憲法改正を断念すると明らかにした。背景に何があるのか。そこから日本は何を学べるのか。フランスの憲法に詳しい井上武史・九州大准教授に聞いた。 エッフェル塔の周囲をパトロールするフランス軍の空挺部隊=3月30日、ロイター フランスの憲法改正の議論は、最後は政争で決まってしまいました。 オランド大統領が提案した憲法改正案には、「非常事態」の規定と合わせて、二つ以上の国籍を持つ人がテロ関連の犯罪に関わった場合にフランス国籍を剝奪(はくだつ)するという「国籍剝奪条項」が盛り込まれていました。この国籍剝奪条項への賛否をめぐって、与党の社会党も分裂しました。 国籍剝奪