●DVDを返却に行って、ツタヤは最近ではマンガのレンタルもやってるんだなあと、いつもはスルーする棚の前をうろついて、普段マンガはほぼ読まないのだが、『僕だけがいない街』(三部けい)というどこかでタイトルを聞いた記憶があるマンガを六巻まで試しに借りてみた。 最近のエンタメはこんなにも高度なものになっているのかと驚いた。読者の心をひっかけ、吊り上げて、引っ張りつづける密度と技術的達成には驚くべきものがあるなあと思いつつ、六巻まで一気に読んでしまった。通俗性のある物語の強い「引き」および分かり易い感情、動機、メッセージと、様々な要素が様々なレベルで反復しながら少しずつ位相が変化してゆく上品で複雑な形式とが両立しているのもすごいことだと思った。 おそらくこの作品を詳しく分析することで、物語を組み立てたり、そこに人を引き込んだりする技術――現時点で最新版といえるもの――の多くを学べると思われるし、し