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ブックマーク / kamiyakenkyujo.hatenablog.com (28)

  • ビルトインされたポリコレ棒 『ゴールデンカムイ』をめぐって - 紙屋研究所

    これなんだけどね。 「ゴールデンカムイは少女が性的搾取されないから良い!」という持ち上げ方に疑問を感じる人たち - Togetter 明治時代に北海道で隠されたとされる金塊を争奪する物語、野田サトルのマンガ『ゴールデンカムイ』について。ヒロインのアシㇼパの「サービスシーン」「エッチ展開」がない=少女が性的搾取されないからよい、いやそんな理由で勧めるのはおかしい、的な論争。 ある倫理基準がその人の中にしっかりとビルトインされている場合、ごくごく自然にその倫理基準に沿うかどうかで好悪を分けてしまうということは実によくあることである。そして、それは決して不自然な行為ではない。 女性の人権をめぐって日々の生活の中でせめぎ合い・葛藤・闘争をしているようなセンシティブな毎日であれば、そのこと一つで作品に引っ掛かりを感じてしまう、あるいは作品全体がダメなふうに感じてしまう、というのはきわめて自然なことだ

    ビルトインされたポリコレ棒 『ゴールデンカムイ』をめぐって - 紙屋研究所
  • 五十嵐健三『匿名の彼女たち』 - 紙屋研究所

    『匿名の彼女たち』は、正直に言えばわりと楽しみにしているマンガの一つである。 風俗が好きな33歳のさえない独身サラリーマン男性が、全国に出張するさいに、ほうぼうの風俗店に立ち寄り、そこであった出来事を淡々と、主人公の視点から言えばペーソスを交えて描いていく作品で、「全国風俗図鑑」の役目をはたしている。 まず、なぜ既婚男性であるぼくが、この作品を「楽しんで」いるのか、その側面を書いてみる。 作についてネットでいろいろ見たところ、レビューもいくつかあり、ぼくが考えていたことをすでに述べてくれているので、それを手がかりにしてみる。 知らない人のための最強風俗教「匿名の彼女たち・第2巻」 - 無駄話 そもそも風俗情報を知りたければ、風俗情報誌を読めばいいんです。そうではなく、風俗に興味はあるけどよく知らない人が“パッと見で風俗漫画だと分からない表紙”の漫画を買うことに意義があると思うのです。こ

    五十嵐健三『匿名の彼女たち』 - 紙屋研究所
  • 古屋兎丸『インノサン少年十字軍』 - 紙屋研究所

    「ユリイカ 詩と批評」2016年3月号の古屋兎丸特集で、「『政治的なもの』を浮かび上がらせる 『帝一の國』をめぐる小考」という一文を寄稿させていただいた。古屋の『帝一の國』では、虚構と現実がどうせめぎあい、どのようにして「政治的なもの」が浮かび上がっているかを書いてみた。 さて、ここでは古屋の『インノサン少年十字軍』について書く。 「少年十字軍」というものを初めて知ったのは、高校の世界史の授業だった。 といっても、授業中山川出版社の『世界史用語集』を読んでいるときに最初に知り、すぐに続いて、いつも反動的なことばかり言っていた世界史の教師が教壇から「少年十字軍」の悲惨な運命について語ったのであった。 ぼくのつれあいも「少年十字軍」を知らなかった。世界史を選択していたにもかかわらずである。 「少年十字軍」について知らない人のために簡単に説明しておこう。 少年十字軍 Children's Cry

    古屋兎丸『インノサン少年十字軍』 - 紙屋研究所
  • 「『漫画家になりたい』という子どもを待ち受けているもの」 - 紙屋研究所

    季刊「人間と教育」(民主教育研究所編集)で「マンガばっかり読んでちゃいけません!」という連載をしているが、86号(2015夏)で「『漫画家になりたい』という子どもを待ち受けているもの」という記事を書いた。 うちの娘(小2)はマンガばかり毎日描いている。 帰宅後は友だちとも遊ばない。宿題もしようとせず、ぼくが職場からもってきた、不要なA4の上質紙の裏にひたすらマンガを描く。ものすごい「量産作家」である。絵をていねいに描くことにはあまり関心がなくて、物語を絵にしたいという願望が強いようだ。 いろんなものを描くけども、圧倒的には『ドラえもん』の二次創作。 絵の水準はアレなんだが、「後ろ姿」とか「投げ飛ばされた」とか、いろんな構図に果敢に挑戦する姿勢はすごいと思っている。ぼくなんか横山光輝ファンだったのでバストアップの5パターンくらいの絵があれば、だいたい事足りたもんだが。 さて、そんな娘が「漫画

    「『漫画家になりたい』という子どもを待ち受けているもの」 - 紙屋研究所
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    dododod 2015/06/30
  • 『乙嫁語り』7巻 - 紙屋研究所

    またもし、おまえたちが孤児に対して公正にできないことを恐れるなら、女性でおまえたちに良いものを、二人、三人、四人娶れ。それでもし、おまえたちが公平にできないことを恐れるならば、一人、またはおまえたちの右手が所有するものを*1。それがお前たちが規を越えないことにより近い。(中田考監修『日亜対訳クルアーン』p.107) 19世紀の中央アジアを、現実的・歴史的根拠をもとにフィクションで描く森薫『乙嫁語り』は、7巻でイスラームの「一夫多」をテーマにする。 アニスは富豪の嫁である。 「奥様は当にお幸せでございますね」 「そう?」 「そうですとも 何不自由なくお暮らしですし こうして男のお子様にも恵まれて 旦那様だって これだけのお家なら もう2・3人 奥方をお持ちに なってもよろしいのに 奥様ひとすじで ございますからねえ」 というのがアニスのデフォルトである。夫はグラフィックからしていかにも優

    『乙嫁語り』7巻 - 紙屋研究所
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    dododod 2015/02/23
    一夫多妻
  • 秋★枝『恋は光』 - 紙屋研究所

    秋★枝『恋は光』は設定が変なマンガである。 主人公の男子大学生・西条は、理系学生っぽい*1風貌の系列でいかにもオタクくさいのであるが、彼には他人が恋をするときに発している光が見えるのだという。それを女友達で、いつもつるんでいる北代に告白するところから話が始まる。 西条は、同じ講義をとった東雲(しののめ)という女子学生に恋をしてしまう。東雲はケータイをもっていないことに見られるように、時代とズレた、80年代くらいからタイムスリップしてきたようなエキセントリックな女子学生である。 ちなみに、北代も東雲も学内で目立つほど「顔が良い」という設定になっている。 このマンガで、圧倒的に気になるのは、北代である。 北代はずっと西条につきまとっている。他人から「西条の彼女」だと勘違いされているほどにいつもいっしょにいて、西条を「センセ」とからかい気味に呼びながら西条のトークを好奇心いっぱいに楽しんでいる。

    秋★枝『恋は光』 - 紙屋研究所
  • 速水螺旋人『大砲とスタンプ』 - 紙屋研究所

    大西巨人『神聖喜劇』を読んでいると、軍隊が法令でかんじがらめになっていることがよくわかる。 『神聖喜劇』の主人公・東堂太郎は、軍隊で死ぬことを思い定めてきたはずだったのに、目の前にある不条理に次第に闘争心を起こしてしまう。その際の武器が軍隊内の規則と法令であった。 特種の法治主義的・制定法主義的領域と私が考える軍隊兵営で、軍人は、殊に営内居住の下士官は、おびただしい法令(規定)の支配下に生活している。彼らの日常的起居寝は、『軍隊内務書』、『内務規定』、『陸軍礼式令』などによって代表的に制約せられる。(大西『神聖喜劇』光文社文庫、第2巻、p.313) どれくらい軍隊は法令にしばられているか。 たとえば、金玉は袴下(ズボン下)の左右どちらに収納するのか――このようなことまで決められている。日軍の『被服手入保存法』には、 睾丸ハ左方ニ容ルルヲ可トス。 とあるのだ。 法令や制度でがんじがらめに

    速水螺旋人『大砲とスタンプ』 - 紙屋研究所
  • 竜田一人『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』 - 紙屋研究所

    「週刊プレイボーイ」のマンガ評「この漫画がパネェ!!!」で竜田一人『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』(講談社)について書いた。書のオビでも(小さく、だけど)紹介されている。*1 記録マンガとしてすぐれている ぼくは、『いちえふ』について、基的には記録マンガとしての素晴らしさを評価した。これはすでに多くの人が指摘している通りである。 映像=絵としての記録、というシンプルな意味である。 文字で読んだ原発のルポでは、空間的な認識をどうしても起こしにくい。30年以上前のルポである堀江邦夫『原発ジプシー』(現代書館)は後述するが大変すぐれた潜入ルポである。しかし、文字によって得られる空間イメージはやはりかなり制限される。ところどころ、作業の写真が載っているのだが、昔の写真であるためか、全体的に黒っぽくてわかりにくい。増補版p.164の写真など何がなんだかわからない。 竜田『いちえふ』では、

    竜田一人『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』 - 紙屋研究所
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    dododod 2014/05/02
    ”映像=絵としての記録”
  • 文書にして出すということ - 紙屋研究所

    娘が保育園を卒園した。 0歳児から6年間預けた。子どもは一人しかいないので、おそらくこれで保育園とはおさらばだろう。 保護者会の会長を最後の1年間つとめた。 園の存続が大問題になり、ぼくとしてはこれに明け暮れた1年だった。いったい保育園が消えてなくなるかもしれない、という事態なのに、「保育の向上」を組織目的にかかげる保護者会が何もしなくてどうする、というのがぼくの思いだった。 今はまだ詳しく書けないが、かなりのことができたと思う。しかもそれはぼくにしかできないことでもあった。支えてくれる人がたくさんいて、心底うれしかった。 組織体としてもPTA的形骸化が進みつつあった中で、久しぶりに自主的な運動の息吹をとりもどしたと感じた。 この運動の中で感じたことは、「文書にして意思を示す」ということの大事さだった。特に、お役所との関係では、決定的である。 地域(地元の町内会のようなもの)に要請というか

    文書にして出すということ - 紙屋研究所
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    dododod 2014/03/23
  • マンガを読んで仕事知ろうランキング - 紙屋研究所

    昨年末、12月28日付の日経プラス1で「マンガを読んで仕事知ろう」特集。仕事がわかるマンガが専門家や書店員によって10冊選ばれ、ランク付されていた。勝手にコメントをつけてみる。 10位は武富健治『鈴木先生』(双葉社)。 教師の仕事の実態ではなく、教師という仕事の論理がよくも悪くも凝縮されているので、たしかに学校教師という仕事を考える上でのマンガではある。マンガナイト代表・山内康裕が「学校に限らず先生と呼ばれる職業の人には読んでもらいたい」とコメント。教育者全般に普遍的な問題は描かれているとは思うけど、やはり中学生を相手にするという点にこのマンガの大きな「制約」(限界ではない)があり、醍醐味もあるから、これはどうなのかなと思う。 9位はヤマザキマリ『スティーブ・ジョブズ』(講談社)。 いやいやいやいや。1巻出ただけだろ。1巻読んだだけだと、こいつ仕事人生ナメてんのかとしか思えないから。 む

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    dododod 2014/01/10
  • 海野つなみ『逃げるは恥だが役に立つ』 - 紙屋研究所

    週刊プレイボーイの先週発売分に、海野つなみ『逃げるは恥だが役に立つ』の書評を書いた。 このマンガは25歳の女性・森山みくりが主人公で、大学卒業時にも就職できず、大学院にすすんだがその後も就職できず、派遣の仕事もやがて切られて無職になってしまうところからスタートしている。彼氏もいない。 みくりは、報酬をもらいながら父の元部下・津崎平匡(36歳)の家事代行をやっているうちに、みくりの実家が引越しをしなければならなくなり、主人公は雇用継続をしたたままでは住居がなくなる危機に直面する。 そこで、住み込みでやればいいのでは?→いっそ結婚すればいいのでは? というふうに話がすすんでしまう。その「結婚」はただの結婚ではなく、いわば偽装結婚結婚にともなく各種の控除や特典を得ながら、住み込みの家事代行を続けるための方便として使われる。 ここでは結婚は「セックス・恋愛」+「家事労働」として現れ、みくりの場合

    海野つなみ『逃げるは恥だが役に立つ』 - 紙屋研究所
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    dododod 2013/11/18
  • 志村貴子『放浪息子』 - 紙屋研究所

    うぉぉぉ……『放浪息子』が終わってしまった。 ぼくの一番好きなマンガの一つが……。 疎外 志村貴子の短編集『どうにかなる日々』には、中学生のとき家庭教師の男と性行為していた少女・琴子の話が出てくる。琴子は、陰毛が生えてくるので自分が「先生」に嫌われるのではないかと思い、逆に「先生」を告発して自分の目の前から消してしまう。「先生」との記憶が甘美だった琴子は、自分に陰毛が生えてくるたびに悲しくなる。 どうにかなる日々 新装版 ピンク 作者:志村貴子太田出版Amazon しかし、高校生になって、つきあっている男の先輩にそのことを話す。 先輩に先生のすべてを話した あたしの知ってる限りのすべてだけど そしたらなんだか先生が 先生がまるで 得体の知れない うす気味悪いなにかに 思えてくるので 不思議だった 自分の中から外に取り出され、生み出されたものが、やがて自分に対立し、自分にとってよそよそしくな

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    dododod 2013/09/03
    昔のテープ、泣くよね
  • 映画「風立ちぬ」を批判する - 紙屋研究所

    宮崎駿監督の『風立ちぬ』を観た。お盆で帰省し、子どもを見てもらっている間に夫婦で。 ちょっと長くなると思うので、最初に結論書いておこうか。 恋愛要素は男目線で気持ちがノッた。 飛行機にかける夢についてはロジックがまったく詰め切れられておらず、面白くなかった。 零戦をつくった責任について無邪気すぎるという点が最大の批判点。 えーっとネタバレもありますから、読む人は承知して読んでほしい。 あらすじを知らない人はここを読まないだろうけど、一応。零戦(零式戦闘機)の設計者として有名な堀越二郎という実在の人物の半生を描き、それに堀辰雄の小説『風立ちぬ』のラブストーリーをまじえ、菜穂子という少女との恋愛をからめて虚構化した作品。 ジブリの公式のあらすじ解説はこちら。 http://kazetachinu.jp/story.html 恋愛要素は男目線で気持ちがノッた 菜穂子との恋愛は、(;゚∀゚)=3ム

    映画「風立ちぬ」を批判する - 紙屋研究所
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    dododod 2013/08/19
  • 土山しげるを語る - 紙屋研究所

    「FRIDAY Dynamaite」の2013年3月14日増刊号で土山しげる作品の魅力について語りました。土山人のインタビューの上に、載ってます。 そう。この号は、今井メロの「特別付録DVD&スクープ袋とじカラー」がついている号です。ええ。 ぼくなりに土山作品について思っていることを、ここでも書いてみる。 ご飯とラーメンべる描写が抜群 土山しげる作品の最大の魅力は、なんといっても、うまそうにべるその描写力にある。 まず、絵柄。グラフィック。グルメ系の漫画料理をうまそうに見せるというハードルがある。劇画作家であり、大学に行きながら夜間に絵の学校に通っていただけあって、画力はすごい。しかし、土山の場合は、なんといってもご飯、飯粒と、ラーメンの描写が抜群と思う。 というか、こだわりがある。 ご飯ものというのは、『極道めし』ではないが、やはり見ている者の喉を鳴らせるうえでは一番の武器だし

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    dododod 2013/04/02
    ”うまそうに食べるその描写力”
  • 児童マンガとしての『よつばと!』 - 紙屋研究所

    うちの娘は5歳になる。この年齢は、なんと、あずまきよひこ『よつばと!』の主人公・小岩井よつばと同じだ。よつばは、ひらがなとカタカナが読めるようであるが、うちの娘もどうにか仮名は読めるようになった。だから、ふりがながふってある『よつばと!』は読めてしまうのである。 よつばと!(11) (電撃コミックス) 作者:あずま きよひこKADOKAWAAmazon そして、ハマった。 いや、こんなにハマるものかというくらいハマっている。 マンガの早期英才教育……などというわけではないが、ためしに与えてみたら、面白いくらいに夢中になっている。娘がいれこんでいるのは『ドラえもん』『モジャ公』(以上、藤子・F・不二雄)、そしてこの『よつばと!』である。保育園から帰ってくるなり、リュックサックを投げ捨てて、この3冊のどれかを熱心に読んでいる。『じょしらく』とか『演劇部5分前』みたいなマンガもぼくがポイと床にお

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    dododod 2012/09/12
    "強烈な生活臭のリアルをもち、そしてどんな絵本のストーリーでの出来事よりも楽しそうに、大人たちと日常の中で遊んでいる"
  • 東浩紀『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』 - 紙屋研究所

    「オルタ」という雑誌で東浩紀の「民主主義2.0」について書いたことがある(2009年11-12月号「メディアから時代を読む #9」)。 そのときまだ茫洋としていた問題について、ぼくは批判や疑問を書き連ねたが、定義づけや具体案をふくめ、これらのぼやけていたものは東の近著『一般意志2.0』で一定の輪郭を与えられることになった。 先にぼく流にざっくりと中身をまとめてみよう。 ルソーの「一般意志」は、あるアルゴリズムにしたがって生まれてくるグーグルのページランクみたいなもので、人々の無意識のデータベース*1から抽出されてくる数学的な結論のようなものである。*2 しかしそのような一般意志は大衆の欲望の集積であり(グーグル型民主主義)、それで政治を運営するのは危険。専門家や政治家たちの熟議(ミクシィ型民主主義)と相補的に用いるべき。民主主義2.0(=ツイッター型民主主義=グーグル型民主主義+ミクシィ型

    東浩紀『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』 - 紙屋研究所
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    dododod 2012/01/19
  • 宇仁田ゆみ『うさぎドロップ』 - 紙屋研究所

    ※ネタバレがありますので注意してください。 2011年12月5日付の「民医連新聞」のコーナー「この一冊を読んでみた」で宇仁田ゆみ『うさぎドロップ』(祥伝社)を紹介した。 『うさぎドロップ』は、祖父の葬儀にいった30の独身男・ダイキチが、祖父の子であるというりんを引き取って育てる話である。6歳で引き取られたりんが高校生になってからのいわば「第二部」的な話が、5巻からはじまり、9巻で完結する。 「育ての親と結婚する」という結論への嫌悪 『うさぎドロップ』の結末が気持ち悪いというのがつれあいの感想である。つれあいは、このマンガについて常々この種の結論が出されることを「最悪」と評していた。なぜなら、りんが父親役であるダイキチのことを好きになってしまい、ダイキチも結局その気持ちを受け入れて結婚を約束してしまうからだ。 つれあいとの会話。 「りんは、一度家族をすべて失い、その後ダイキチに引き取られなが

    宇仁田ゆみ『うさぎドロップ』 - 紙屋研究所
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    dododod 2011/12/18
    ”自分をもっともうまく育ててくれたという得難い実績のある父親を、ふたたび得難い育児のパートナーにしたい”
  • 井上純一『中国嫁日記』 - 紙屋研究所

    週刊「プレイボーイ」の2011年9月19日号の「この漫画がパネェ!!」のコーナーで井上純一『中国嫁日記』のレビューを書いた。 『中国嫁日記』は、40代オタク男・井上が20代の美人(と思われる)中国人女性・月(ゆえ)と結婚し、その結婚生活を4コマ漫画にしたものである。ブログで人気を博したので書籍化されたものだ。 なんでウケてるのかってことなんだけど、結婚という異文化衝突・交流があってだな……という要素はもちろんある。特に国際結婚だから、その異文化衝突という側面が極端なまでに強調されている。 味噌汁に香菜を入れてものすごく生臭くなるけど、月は当然という顔をしているとか、肉じゃがセットを「炒め物」と勘違いして炒めたがものすごくうまかったとかそういうやつ。 しかし、実際、上のように書いてみてもわかるとおり、その異文化衝突の事実自体はそんな「大人気ブログ」になるような中身でもない。むしろ「はあ……

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    dododod 2011/11/06
  • 民医連新聞で『MASTERキートン』の書評を書きました - 紙屋研究所

    民医連新聞の2011年7月4日付に「マンガ評論家紙屋さんの『この一冊を読んでみた』」第4回に浦沢直樹(作画)・勝鹿北星(原案)『MASTERキートン』の書評を書きました。 このコーナーは、「新旧」の漫画を紹介していいことになっているので、『MASTERキートン』を書庫から引っ張り出して久々に読んでいるうちに書評が書きたくなった、というのが最初の動機です。ところが書いてからいろいろ調べてみると、長らく手に入らない状態だったのに8月に完全版が出るということになっていて、Twitterでも入稿したちょうどその日にその話題がつぶやかれていてちょっとびっくりしました。 読み返してみて、改めていい作品だと思います。一話完結方式なので、来短い分量で「人生」を語らせたりすると説教臭くなるものですが、そうならないところがすごい。 学生運動にハマっていた主人公が、学生結婚をしたのち、男の子を男手一人で育てる

    民医連新聞で『MASTERキートン』の書評を書きました - 紙屋研究所
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    dododod 2011/07/22
  • 水谷フーカ『14歳の恋』 - 紙屋研究所

    14歳の恋というタイトルに何を期待してこのマンガを買うのか。 たとえば浅野いにお『うみべの女の子』だと、中学生がはずみで不器用なセックスをする描写を読むことで、大人がセックスに対して必ずいくらかはもっている「べ馴れた」感覚をいっさい排除して、セックスの一番なまなましい部分、ぼくがセックスに抱いている原初的な憧憬のひとつを得ようとするのである。 あるいは、かがみふみをの中高生の恋愛シリーズのように、手がふれあったり、何げない仕草に猛烈に相手を意識してしまう自分の心の動きを、微分しつくした描写を味わうことで、今はもう失われてしまった「恋愛初期の心の興奮」を再現しようとする期待で読む場合もある。たとえ片思いであってもこの感覚はぼく自身が体験したことがあるものだ。 他にもいろんなバリエーションがある。 ただし、男性向けの漫画に限る。 現在進行形の14歳(前後)の恋愛を描く少女漫画の場合、驚くほど

    水谷フーカ『14歳の恋』 - 紙屋研究所
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    dododod 2011/07/04