実は、本書には幻のタイトルがありました。私の側が用意していたのは、『ライシテとは何か』というもの。しかし、出版社によれば、『〇〇とは何か』というタイトルは、最近話題の言葉を改めて根本から論じるような本にふさわしいのだそうです。つまり、「ライシテ」という言葉は、日本ではそもそも耳にする機会がまだ少ないと判断されたことになるでしょう。 「ライシテ」とは、簡単に言えばフランスの政教分離のこと。しかし、ことは狭い意味での政教分離の話にとどまりません。フランス革命以来の共和国の理念が詰まった言葉で、ライシテの歴史はフランスの近現代の歩みと軌を一にします。すると、ではライシテはあくまでフランスに固有の話なのだなと思われてしまうかもしれません。そう主張する研究者もいますが、私の考えではライシテはフランスだけの話ではありません。 もうひとつ、気になっていたことがありました。たしかに、「ライシテ」はまだ日本