『日本書紀』から『日本三代実録』に至る六部は勅撰、つまり天皇の命で編纂された、日本古代史の根本史料だ。 しかしたいていの人は『日本書紀』がせいぜいで、他はちゃんと読んだことがないのではないか。私もそうだ。また『日本書紀』の前半は神話と地続きで、歴史書と呼ぶのに違和感を覚える人もいるだろう。しかし編纂者も読み手も国政に関わる貴族なので、あまりに恣意的な編纂はできなかった。また勅撰なので、公文書も十分に活用して書かれている。 歴史を古く見せるための延伸や、政治闘争の実態歪曲などの疑惑もあるが、本書はそれらの具体事例に触れながら、『六国史』の実態を解き明かすと共に、「歴史書の意味」も問うている。 『日本書紀』では、神功皇后はいたのか否か、壬申の乱直前に大友皇子は即位していたのか否かなど、近現代まで議論の続く問題が、どう表現されていたか。なぜそんな表現になったのか。『続日本紀』では、前半と後半で相