数々の華々しい成功に彩られている宇宙開発だが、その栄光の影には、失敗の歴史が連なっている。多くの人から望まれるもさまざまな事情により実現しなかったもの。あるいはごく少数からしか望まれず、消えるべくして消えたもの……。この連載では、そんな宇宙開発の"影"の歴史を振り返っていく。 前回紹介したように、米国は1990年代前半、人工衛星を宇宙へより安価に、手軽に打ち上げるため、「デルタ・クリッパー」と名付けられた再使用ロケットの開発に着手した。そして1993年にその小型実験機「DC-X」が完成し、いよいよ飛行試験が始まることになった。 未知への飛行 1993年4月に完成したDC-Xは、その約4カ月後には早くも最初の飛行実験を迎えた。1993年8月18日16時43分(山岳部夏時間)、米国のニューメキシコ州にあるホワイト・サンズ・ミサイル実験場において、DC-Xはゆっくりと離昇し高度約50mまで上昇、