“日本での麹カビによる酒が、いつごろからはじまったかについての確証はないが、一説には弥生時代後期との見方がある。ただ文献による初見は『播磨国風土記』で、そこには「ある神社の大神の御粮が枯れてかびが生じたので、それで酒を醸さしむ」(神社の神様に供えた米飯が古くなって、そこにカビが生えたので、それで酒を醸した)とある。 実は麹の語源からもこの見方は符合しており、米飯にカビが生えたものを当時の古文書には「加無太知」または「加牟多知」と記してあるが、これはそれまでの「嚙む」の語源を残しながら「カビ立ち」の意味を持たせて「カムタチ」→「カムチ」→「カウチ」→「カウジ」→「コウジ(麹)」ととらえるならば、唾液酵素からカビ酵素への転換を無理なく示してくれる、歴史をつなぐ語源変化ということになろう。”