“第一に、「はな」と呼ばれるものは、日本人しか持っていない。勿論このことは、日本語の「はな」ということばで指す顔の部位が、外国人には欠けているという意味ではない。 日本語では、象は鼻が長いと言う。日本人にとっては、象の顔の前にぶら下がっているものと人間の顔の真中についているものとは、どちらも「鼻」である。つまり両者は同一の範疇に属する異ったメンバーなのである。両者を共に「鼻」と言うことの意味は正にこれである。 ところが多くの言語では、象の顔の突起物は、人間の顔の突出物と同じことばでは呼べない。例えば英語では象の鼻はtrunkと呼ばれ、木の幹などと一緒にされている。フランス語ではtrompe、ドイツ語ではRüsselなどと言い、人間の鼻を言うnezやNaseとは区別される。面白いことにトルコ語のburunやロシア語のHOCは、人間の鼻と鳥の嘴の両方を意味している。つまりどの言語でも、人の顔の