【ロンドン=柳沢亨之】大英博物館が、所蔵する古代ギリシャの彫刻作品を初めて海外に貸し出し、ギリシャ政府が「国民への挑発」(サマラス首相)と猛反発している。 同国は英国に略奪されたと主張し、返還を求めてきたためだ。 この作品は紀元前5世紀築とされるアテネ・パルテノン神殿の大理石彫刻「イリッソス像」。ロシア・サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館からの要請で貸し出され、同館で6日に一般公開が始まった。 だが同像を含む彫刻群は元々、19世紀初めにオスマン帝国支配下のギリシャから当時の英大使が運んだものだ。ギリシャ政府は長年、返還を要求してきた。 サマラス首相は5日の声明で、大英博物館側が移動による損傷の恐れを理由に返還を拒んできたとした上で、「その説は(今回のロシアへの移動で)通用しなくなった」と批判した。英政府は論争に関与しない意向だが、英議会には返還すべきだとの声もある。