“ここで遺体で系統を語るときの、私たちのプロ意識を話しておきたい。唐突だが、「となりのトトロ」なるアニメ作品のカットに、ヤギとされるウシ科動物が登場したことを取り上げよう。アップになったその動物は口元を軽く開くのだが、なぜか上顎にニョキッと前歯が覗く。リアリティを求めて映画を創ってきた人々からすれば、彼の作品群は最初から議論の対象にならないだろうが、解剖学者の私にとっても、酷評の矛先は、ウシ科とおぼしき造形に上顎の前歯を描いてしまう、その乏しい「形のセンス」にある。興行成績で世界を席巻する勢いのある宮﨑駿のアニメーションであるが、骨の形を真剣に見ているプロフェッショナリティにとって、系統とは、アニメの作者が空想と虚構へ逃避することを許さないだけの重みをもつものだ。”