本稿では、文体パロディにおける絵文字の分析を通し、これまでの文体研究においてあまり議論がなされてこなかった視覚的文体素の重要性を指摘する。なお本稿における文体とは、小池 (2005) の定義する「メッセージの効率的伝達を考え て採用される、視覚的文体素 (文字・表記) 」と意味的文体素 (用語・表現) とによる言語作品の装い、または、装い方」をさす。小池の定義によれば「視覚的文体素」とは「漢字 (正字・略字・俗字) 、ひらがな (変体がな) 、カタカナ、アルファベット、ギリシア文字、キリル文字、ハングル、アラビア数字、ローマ数字、振り仮名・送り仮名・仮名遣い、それに疑問符、感嘆符、句読点などの各種記号や改行・空角・余白、文字の大小等」をいい、「意味的文体素」とは「言表態度 (モダリティ) 、話し言葉・書き言葉、共通語・方言、漢語・和語・外来語・外国語、古語・新語、完全語形語・省略語、雅語・