「マチネの終わりに」平野啓一郎 著 を読み終えて、あたまの中に、ある考えがあふれてきたので、ちょっと書いておこうと思う。 「過去は変えられる」ということについて、何年もずっと考えている。 当時の経験や感情はかわらないけれど、あとからそれがまったく別のものに見えたり、まったく別の捉え方をするようになったりする。単に過去を美化するとか正当化するいうことではなく。 わたしはこどものころから父との相性が悪く、双方がそれを隠さない性格だったので、年々仲が悪くなっていった。 小学生の頃からずっと、ぶつかることも反抗もせず、ただ、父がいなくなることだけを願っていた。寝る前に何度も、寝ている父に刃物を向けたり、ビールに毒を盛ったりという、こどもならではの残酷で稚拙な想像を繰り返していた。 わたしは、出生時、血液不適合で黄疸がひどく、産まれてすぐに交換輸血をして、体内の血液をすべて取りかえた。その事実を聞い