自国の大統領や首相が無能だというのは最高の「国家機密」であり、決して漏らしてはならない。国際的なジョークの定番といっていい。機密といってもその程度のもの、国民はとっくの昔に知っている。そんな皮肉も込められているのである。 ▼中国の国家安全省に拘束された朱建栄氏に、国家機密を漏らした疑いが持たれているらしい。かつて日本で出版した著書に朝鮮戦争などに関する未発表資料が引用されていた。日本での講演などに、尖閣諸島関連の非公開文書の内容が含まれていたということのようだ。 ▼いかにも作為的な臭いがする。第一、中国では「指導者の無能」ではないが、インターネットで簡単に引き出せる資料でも実は国家機密だったということもあるそうだ。朱氏が講演や著作で引用したものも、中国政府に害をもたらすようなものではないという。 ▼朱氏は日本での活動が長いが、中国が嫌う人権活動家ではない。だから悪意で機密を漏洩(ろうえい)