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ブックマーク / himaginary.hatenablog.com (139)

  • 競争的労働市場での最適な最低賃金政策・補足 - himaginary’s diary

    昨日紹介したリー=サエズの論文と小生の以前のエントリについて、一点補足しておく。 小生のそのエントリに対しては、大竹文雄氏から、昨日紹介した雇用の優先順位(リー=サエズのいわゆる効率的割り当ての問題)に関するもの以外に、以下のコメントを頂いた*1。 仮に、労働者としての消費者余剰が最低賃金上昇によって増加しても、生産者余剰は確実に減少し、その効果が上回るので社会的な総余剰は確実に減少する。 然るに、リー=サエズでは最低賃金の導入によって社会的な総余剰は増加する、という結果を導き出している。これは如何なる理由によるのであろうか? 以下に、論文の図を再掲する。 ここで赤の四角形から緑色の三角形の下半分を差し引いたものが最低賃金の導入によって生じる労働者としての消費者余剰の増加であり、赤の四角形に緑色の三角形の上半分を加えたものが労働の需要者たる生産者の余剰の減少である。従って、緑色の三角形の分

    競争的労働市場での最適な最低賃金政策・補足 - himaginary’s diary
  • 競争的労働市場での最適な最低賃金政策 - himaginary’s diary

    オバマ大統領が一般教書演説で最低賃金を7.25ドルから9ドルに引き上げるよう提案したことを受けて、エコノブロゴスフィアが最低賃金を巡って俄かに騒がしくなった。そんな中、EITCと最低賃金は代替的手段ではなく補完的手段である、と述べたマイク・コンツァルのエントリに、クルーグマンが「this is news to me」としてリンクした*1。 コンツァルは、EITCと最低賃金の「相補性原理」のソースとして、自らがインタビュアーとなってまとめた労働経済学者Arindrajit Dubeのインタビュー記事を挙げているが、彼がリンクしたジャレッド・バーンスタインも同様のことを述べている。コンツァルはさらに、こうした見解の理論的裏付けとして、David LeeとEmmanuel Saezの論文「Optimal Minimum Wage Policy in Competitive Labor Marke

    競争的労働市場での最適な最低賃金政策 - himaginary’s diary
  • クルーグマンのマイナス均衡実質金利論:日本の経済学者の受け止め方 - himaginary’s diary

    クルーグマンが「It's Baaack」論文で日の流動性の罠の原因を人口減少に求めていた、という点を、最近uncorrelatedさんが頻りに強調されている(例:こちらのブログエントリやこちらのツイート)。そこには、日の論者がその点をスルーしてきた、という含意が込められているようである。だが実際には、その点も日経済学者によって議論されてきた。例えば、均衡実質金利を実際に測定した鎌田康一郎氏の論文*1では以下のように記されている: ただし、ここでの結果は、必ずしもクルーグマンの議論をサポートする材料とはなっていないようである。Krugman[1998]では、負の均衡実質金利の原因を高齢化と労働人口の減少に求めている。仮にその議論が正しいとすれば、負の均衡実質金利は持続的な現象となるはずである。しかし、稿の結果をみると、均衡実質金利の推計値は、その多くが、2000年代初頭に正値に転じ

    クルーグマンのマイナス均衡実質金利論:日本の経済学者の受け止め方 - himaginary’s diary
  • 蟹は甲羅に似せてインフレを予想する - himaginary’s diary

    Carola Binderブログ*1が、日の状況に絡めつつ、Ulrike MalmendierとStefan Nagel*2の「Learning from Inflation Experiences」という論文を紹介している。 以下はその要旨。 How do individuals form expectations about future inflation? We propose that past inflation experiences are an important determinant absent from existing models. Individuals overweigh inflation rates experienced during their life-times so far, relative to other historical dat

    蟹は甲羅に似せてインフレを予想する - himaginary’s diary
  • 格差拡大は経済成長の減速要因か? - himaginary’s diary

    というスティグリッツとクルーグマン(追加エントリ)の間で軽く論争になったテーマについて、スティーブ・ワルドマンが考察している。 彼はまず、格差拡大が無条件に過少消費につながることは無い、として、その点ではクルーグマンを支持している。 と同時に、富裕層は確かに貯蓄率が高い、ということを示した研究を幾つか挙げ、その点ではクルーグマンはきちんと文献を渉猟していない、と(暗に)批判している。 では、なぜ大平穏期には、格差拡大が続く一方で富裕層が貯蓄を拡大したにも関わらず、需要は強いままだったのだろうか? ワルドマンはその答えを、一般家計の借り入れ拡大に求める。そしてそれを可能ならしめたのは、実質金利の低下傾向にあった、と言う。その上で、そうした実質金利の低下傾向は、需要維持のために中央銀行によってもたらされた、とワルドマンは説明する。他の説明――例えば、技術や人口動態によって実質金利低下がもたらさ

    格差拡大は経済成長の減速要因か? - himaginary’s diary
  • 日銀とオリバー・ツイスト - himaginary’s diary

    ソシエテジェネラルの通貨ストラテジストKit Juckesが、今回の日銀の政策に対する失望を以下のように説明しているのがビジネスインサイダー記事に引用されている(記事を書いたのはJoe Weisenthal;フェリックス・サーモン経由)。 Please Sir, I want more, said Oliver Twist, fed up with a diet of thin gruel. Such is the market's response to news in Japan. The Bank of Japan announced that from January 2014, it will embark on open-ended bond purchases, buying Y13trn in bonds a month (but only Y2trn a month in

    日銀とオリバー・ツイスト - himaginary’s diary
    enemyoffreedom
    enemyoffreedom 2013/01/24
    「お願いです、もっとください、と少ないお粥に我慢できずにオリバー・ツイストは言った。日本のニュースに対する市場の反応もそんな感じだった」
  • 今後の米国のインフレ率は4〜5%になる - himaginary’s diary

    ピーターソン国際経済研究所のSamuel Reynardが、貨幣の数量方程式に基づく分析から、現在の米国は1990年代の日よりは2000年代のアルゼンチンに近い、という結論を導き出している(Mostly Economics経由)。 The analysis presented in this paper shows that historical episodes of financial crises have been accompanied by different monetary stimulus, which were function of monetary policy reaction and financial sector transmission mechanisms. This has resulted in different inflation paths

    今後の米国のインフレ率は4〜5%になる - himaginary’s diary
  • NGOの監視および評価への民族誌学の原理の組み込み - himaginary’s diary

    昨日はUDADISIの2012年経済学論文ランキングの第5位の論文を紹介したが、今日は第8位の論文を紹介してみる*1。(論文のタイトルは「Integrating Ethnographic Principles In Ngo Monitoring And Impact Evaluation」で、著者は豪州ニューサウスウェールズ大学・国立エイズ社会学研究所のPeter Aggletonと英国Options Consultancy ServicesのStephen A. Bell*2)。 以下はその要旨。 Two recent developments have important implications for how the impact of social change programming is understood in international development. Fir

    NGOの監視および評価への民族誌学の原理の組み込み - himaginary’s diary
  • 経済学を勉強すると嘘をつきやすくなる - himaginary’s diary

    という点について研究した論文がUDADISIの2012年経済学論文ランキングの第2位として取り上げられていた。著者はマドリード・アウトノマ大学のRaúl López-Pérezとケベック大学モントリオール校のEli Spiegelmanで、論文のタイトルは「Do Economists Lie More?」。 以下はその要旨。 Recent experimental evidence suggests that some people dislike telling lies, and tell the truth even at a cost. We use experiments as well to study the socio-demographic covariates of such lie aversion, and find gender and religiosity t

    経済学を勉強すると嘘をつきやすくなる - himaginary’s diary
  • アセモグル=ロビンソンの「直線史観」と文化 - himaginary’s diary

    昨日までの一連のエントリで紹介したサックス記事で槍玉に挙がったAJR論文について、文化の重要性という面から論じたNBER論文が、UDADISIの2012年経済学論文ランキングの第7位として取り上げられていた(著者はハーバードのNathan Nunnで、論文のタイトルは「Culture and the historical process」)。 以下はその要旨。 This article discusses the importance of accounting for cultural values and beliefs when studying the process of historical economic development. A notion of culture as heuristics or rules-of-thumb that aid in decision

    アセモグル=ロビンソンの「直線史観」と文化 - himaginary’s diary
  • 最低賃金引き上げは若者より高年齢層にとって損 - himaginary’s diary

    という実証結果を示した論文をEconomic Logicが紹介している。 以下はその要旨。 We estimate the effects of a significant increase in the minimum wage in Spain between 2004 and 2010 on the individual probability of losing employment, using a large panel of social security records. Our main finding is that older people experienced the largest increase in the probability of losing their job, when compared with other age groups, inclu

    最低賃金引き上げは若者より高年齢層にとって損 - himaginary’s diary
  • ハイパーインフレは稀だが、ユーロ圏の崩壊はその原因となり得る - himaginary’s diary

    と題した論文をピーターソン国際経済研究所のシニア・フェローであり、かつてサックスと共にロシアの経済改革に尽力したAnders Åslund*1が書いている(Mostly Economics経由;原題は「Hyperinflations Are Rare, but a Breakup of the Euro Area Could Prompt One」;ぐぐってみると、Åslundは8月にこのテーマでvoxeu記事も書いている。)。 以下は同論文の要旨。 Hyperinflation—usually 1,000 percent or more a year—occurs only under very special circumstances: in a disorderly breakup of a currency zone; after wars or revolutions, whe

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  • フィフス・エレメント - himaginary’s diary

    貨幣の三大機能と言えば、Wikipediaにあるように、価値尺度(unit of account)、流通手段(medium of exchange)、価値貯蔵(store of value)の3つである。そのほか、繰延支払の標準(standard of deferred payment)を第四の機能としてカウントすることもかつてはあったようだ。 しかし、最近のブログでのやり取り等を通じて、実は貨幣には第五の機能があると多くの人が信じるようになっているのではないか、と思うようになった。その第五の機能とは「実体経済の健全性の尺度」である。 一般に流動性の罠とは、金利をゼロまで下げても人々が(貨幣を含む)金融資産志向を続け、実体経済に資金が回らない、という状況を指す。その金融資産志向の原因については、ケインズの言うような債券価格の下落を恐れた貨幣への逃避(流動性選好)や、小野理論の言うような金

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  • 国債バブルと貨幣バブル - himaginary’s diary

    24日エントリに対し、「信用を失う国債を抱えることでインフレーションが起きたとしても、それは好景気を意味しない」というはてぶコメントを頂いた。しかし、そこで見落とされているのは、そもそもインフレーションというものが、いかなる形であれ、貨幣という中央銀行の債務が「信用を失う」ことに相当する、ということである。中銀と政府を一体として考えるならば、貨幣が信用を失うことも国債が信用を失うことも一体政府の債務の信用が失われる点で差はなく、「信用を失う国債を抱えることでインフレーションが起きる」という表現は、単なるトートロジーに過ぎなくなる。あるいは、クラウゼヴィッツの言葉を借用して表現するならば、「国債の信用の喪失とは、他の手段をもってする貨幣の信用の喪失の延長(もしくはその逆)」なのである*1。 裏を返せば、国債への過剰な信用の結果生じる国債バブルは貨幣バブルの延長(もしくはその逆)、ということに

    国債バブルと貨幣バブル - himaginary’s diary
  • マクロ経済政策に期待や予測なんか要らない - himaginary’s diary

    Economist's ViewのMark Thomaが、このエントリでStephen Williamsonのコチャラコタ批判を揶揄する一方で、こちらのエントリではその流動性の罠に関する考察を称賛している(後者のリンク先のWilliamsonエントリはこちらで邦訳されている)。 ただ、その2つのWilliamsonのブログエントリでは、共に、彼のある考えが貫かれているように思われる。その考えとは、(以前ここやここで紹介したような)人々の期待や予想という経路への徹底した不信である。その点は、コチャラコタの「変心」を批判したこのエントリの以下の文章に良く表れている。 Monetary policy should respond to forecast inflation, not actual inflation. You would think Kocheralakota would kno

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  • 逆選択が複数均衡をもたらす簡単な例 - himaginary’s diary

    がEconospeakのkevin quinnにより提示されている。 そのセッティングは以下の通り。 車の売り手が12人いる。車の品質は高、中、低の3種類存在し、それぞれの品質の売り手は4人ずつ。 買い手の留保価格は、高:15000ドル、中:10000ドル、低:5000ドル 売り手の留保価格は、高:11000ドル、中:7000ドル、低:3000ドル 車の買い手は10人。買い手はどの売り手がどの品質の車を売っているかは知らず、分布のみを把握している。 この時、各価格帯の買い手人数、売り手人数、期待価格、超過需要/供給(=買い手人数−売り手人数)は以下のようになる。 価格 買い手 売り手 期待価格 超過需要(+)/超過供給(-) 11000〜 0 12 10000*1 -12 7500〜11000 0 8 7500*2 -8 7000〜7500 10 8 7500 +2 5000〜7000 0

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  • 俺たちに明日はない - himaginary’s diary

    FT Alphavilleのイザベラ・カミンスカが、金融危機が実体経済の「大停滞」に起因する、という見方を10/3エントリで示している(石町日記さんツイート経由の前日エントリ経由)。 You could say, the economic system in this way revolves around incentivising people to delay consumption in the hope that there will always be more tomorrow than today, but without a full guarantee that there will be. If Martin Wolf’s column on Wednesday is right, however, we may now be slipping towards a

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  • 共有地の悲劇としてのユーロ - himaginary’s diary

    ハンプル・チェコ中央銀行副総裁(Mojmír Hampl)のモンペルラン・ソサイエティーのプラハ大会での講演を、BISがHPに掲載している(Mostly Economics経由)。 そこでハンプルは、ユーロにおけるドイツの役割に対し、かなり辛辣な見方を示している。 Yes, the German mark and the Bundesbank were clear monetary hegemons in Western Europe in the pre-euro era. And remember, it was argued that the euro would become “the German mark for the whole of Europe” in the many public debates that went on in Germany prior to it

    共有地の悲劇としてのユーロ - himaginary’s diary
  • ユーロの悲劇 - himaginary’s diary

    一昨日のエントリで紹介したハンプル・チェコ中央銀行総裁の講演では、レイ・フアン・カルロス大学のフィリップ・バガスによるユーロに対する共有地の悲劇の喩えが引用されていたが、そのバガス自身による論考「The Tragedy of the Euro」が、The Independent Instituteという米国の保守系シンクタンクの発行する機関誌The Independent Reviewの2011年春号に掲載されている(Mostly Economics経由)*1。 以下はその結論部。 The concept of external effects and the tragedy of the commons can be applied fruitfully to the case of money. Base-money production is organized monopolist

    ユーロの悲劇 - himaginary’s diary
  • なぜ労働分配率は下がったのか? - himaginary’s diary

    について分析したOECD論文をEconomic Logicが紹介している。 以下はその要旨。 We examine the determinants of the within-industry decline of the labour share, using industry-level annual data for 25 OECD countries, 20 business-sector industries and covering up to 28 years. We find that total factor productivity growth – which captures (albeit imprecisely) capital-augmenting or labour-replacing technical change – and capital deep

    なぜ労働分配率は下がったのか? - himaginary’s diary