平成28年2月29日、文化審議会国語分科会は、報告「常用漢字表の字体・字形に関する指針」を発表した。この報告は、ISBNが付いて、三省堂から一般書籍としても発行されている。 この報告、早稲田大学教授の笹原宏之さんと文化庁国語課の武田康宏さんが中心となって纏(まと)められた渾身の力作で、単に常用漢字に留まらず、戸籍や住民基本台帳などに用いられる人名用の漢字を論じる際にも依拠するに足る貴重な指針となっている。特に、「第1章2 常用漢字における字体・字形等の考え方」は、日本語学を専門としない一般の人びとにも分かりやすく、かつ、字体と字形の議論の層の違いが明確に述べられており、まさに白眉と言えよう。 そもそも「改訂常用漢字表」を見ると、『表の見方及び使い方』の4の項に、「字体は文字の骨組みであるが」とさらりと触れられているだけで、詳細な定義など書かれていない。この指針では、この部分を、例示とともに