【ハラレ(ジンバブエ)】ある日の午後、ルテンド・マニョワさんはジンバブエの首都ハラレにある人気のファストフード店でチキンとフライドポテト、ソフトドリンクを注文した。代金3.5米ドル(約460円)を支払うのに5ドル札を差し出すと、レジ係からお釣りの代わりに、店の名前と次回の購入時に使える金額が記された紙を3枚渡された。 かつて100兆ドル札をこの世にもたらしたジンバブエで、通貨の機能不全が新たな段階に入っている。小額通貨の不足で事業者が独自の「紙幣」――顧客が今後の買い物の支払いに使える紙片(手書きのこともある)――の発行を始めた。釣り銭分としてジュースやペン、チーズなど現物を渡すところもある。 こうした苦肉の策を生んだのが20年にわたる通貨管理の失敗だ。 2000年代初め、当時のムガベ政権は土地再配分政策の実施による農業生産の激減を埋め合わせようと紙幣を増刷。月間インフレ率が796億パーセ