介護に疲れ、長年連れ添った配偶者や、産み育ててくれた親を手にかけてしまう。最近そのようなニュースをあちこちで見かけないでしょうか。介護疲れから、家族の命を奪ってしまう事件が、現実にどれくらい起きているのか。私たちは、このような事件を「介護殺人」と呼ぶことにし、去年10月、取材チームを立ち上げました。なぜ、加害者たちは、一線を越えてしまうのか。悲劇を防ぐことはできないのか。手がかりを探るための、8か月間にわたる取材が始まりました。 介護殺人はどれくらい起きているのか? 「介護殺人」の本格的な取材を始めたものの、いきなり大きな問題に直面しました。警察も自治体も正確な統計を取りまとめていないのです。そこで、取材チームは、2010年以降の6年間にNHKで取材した家族の間で起きた殺人や傷害致死、心中などの事件について改めて調査を行いました。当時の記者の取材メモや裁判資料を集めてデータベース化し、事件