今年の兵庫のシンデレラボーイだ。昨秋、山本は阪神地区の敗者復活戦で敗れて県大会出場を逃している。秋の大会が本格化するのは9月から。注目度が高まり、報道量も多くなる県大会前に敗れているのだから、山本の名前が挙がってこないはずである。 秋、県大会に進めなかったチームのエースが、春に突如、県大会ベスト8まで勝ち進み、選抜4強の報徳学園に2失点の力投を見せ、さらに145キロの速球を投げ込むまでの投手に成長していたのだ。ワクワクするような活躍はまだ続く。山本の噂を聞いた、大阪桐蔭・西谷浩一監督が、市立西宮の吉田俊介監督に申し込んで6月に練習試合が実現。山本は強打の大阪桐蔭相手に7回まで3失点の好投。さらに最速146キロを計測し、山本の評判は日増しに上がり、兵庫どころか、全国的にも注目される投手となっていた。 昨年の市立尼崎に続く、公立校からの2年連続の夏の甲子園出場は、山本拓実の右腕にかかっていた。