皆さんにはノンフィクション作家で小説家の開高健(故人)のフアンの方が多いと思う。が、私は、彼の小説やルポルタージュを“うつ病文学”と呼ぶ。 実は、開高健は、生涯に亘り双極性(感情)障害(Ⅱ型)の精神疾患を患っていた。自殺のリスクは高い。その多くは遺伝性だ。そのため、死ぬまで、何度かのうつ病症と5度の軽躁症があった。彼の小説のモチーフは、躁うつ病に特有な対(両)極の人間感情をベースにしたアンビバレンス(ambivalence)が淵源となっている。うつ症文学者の開高には治療的側面でもあったが、‘躁’(感情の高揚)と‘うつ’(感情の減退)の二律背反性の両極のどん底のどん底から流麗な文体(形容詞・副詞句)ないし言葉を掴んで浮揚してきた。 では、“うつ病文学者”である開高健の実像を暴いてみよう。 彼は、1930年大阪天王寺区生れ。大阪市大法科卒。1989年、食道癌で死去。59才であった。 12才の時