ミャンマーの抑圧と喪失の象徴として多くの人の記憶に刻まれたイメージがある。カメラを手にした中年男性が兵士に至近距離から銃撃され、周囲のデモ参加者らがパニック状態で逃げ惑う中で倒れ込んでいる画像だ。男性は致命傷を負ってあおむけに転がっているが、片手にはカメラを握り続けている。この瞬間を撮影したロイター通信のカメラマンは、のちにピュリツァー賞を受けることになる。 男性は長井健司さん。経験豊かな日本のビデオジャーナリストだ。ミャンマーの「サフラン革命」ただ中の2007年9月27日に殺害された。同革命では、45年間にわたる支配で経済を破綻させた軍事政権に対し、仏教僧らがいくつかの都市で大規模な抗議行動を呼びかけていた。