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ブックマーク / honz.jp (11)

  • 『ヒトはなぜ自殺するのか 死に向かう心の科学』死について考えることと、生について考えること - HONZ

    テーマがテーマだけに、気分が落ち込んでいるときに読むべきではないだろう。しかし、気持ちが落ち着いているときに、自殺というテーマに関する知識を得ておくことは、いつの日かあなた自身やあなたの周りの大切な人を救うことになるかもしれない。そんなワクチンのような役割を果たす一冊である。 著者のジェシー・べリングは、前作『性倒錯者』と同様に、自分自身の実体験をカミングアウトすることから書を始める。自分のセクシュアリティに悩んでいたときのこと、学者として燃え尽き症候群になったときのこと。失業して家の近くの森で自殺の想念にとらわれたときのこと。 そんな主観的なプロローグから話は一気に客観の世界へ飛び、著者は「ヒトはなぜ自殺するのか」というシンプルな問いに、ヒトの心の進化という観点から挑んでいく。 1つ目のアプローチは、自殺を「種」の観点から見るもの。はたして自殺するのは人間だけなのか? もし自殺が人間

    『ヒトはなぜ自殺するのか 死に向かう心の科学』死について考えることと、生について考えること - HONZ
  • 『ヒトの目、驚異の進化』「視覚の進化革命」がここから始まった - HONZ

    著者のマーク・チャンギージーは、1969年生まれの進化神経生物学者。カリフォルニア工科大学の特別研究員、レンスラー工科大学准教授などをへて現在はヒューマンファクトリー・ラボという研究所を主宰。認知と進化についての独創的な研究で世界的に知られ、数多くの論文を学術誌に発表している。その一方で、サイエンスライター、作家、さらにとくに書第一章とも関係のある皮膚の色の変化を浮き彫りにするメガネを開発するなど起業家としての顔をもつ。TEDやYouTubeチャンネルなどメディア露出も多い多才の人である。 書の目的は、ヒトの進化の「なぜ?」という問いに答えることだ。なぜ人間には色付きでものが見えるようになったのか? なぜ人間の目は前向きについているのか? なぜ人間は目の錯覚を起こすのか? なぜ文字は現在のような形をしているのか? お話として面白く刺激的に書かれてい

    『ヒトの目、驚異の進化』「視覚の進化革命」がここから始まった - HONZ
  • 無名科学者の挑戦から読み解く『エネルギー400年史』 - HONZ

    『原子爆弾の誕生』でピュリッツァー賞を受賞したリチャード・ローズの最新作だ。薪が主要エネルギー源だった16世紀後半から、気候変動対策を気に留めながらエネルギーのベストミックスを追及する現在まで、という400年超にわたる人類のエネルギー変遷史を描く。 有名無名の人物の物語を大きなテーマへと昇華させていく著者の手法は書でも健在で、今回も科学者や技術者など個々人の物語を絡めながら、エネルギー変遷史という壮大かつ骨太の物語を紡いでいく。読了後には何か大きな獲物を手にした感覚にさせてくれる。 エネルギーの歴史はイノベーションの連続である。石炭を使った蒸気機関車、石油を使った電灯や内燃機関自動車、原子力発電、地下資源の開発技術、パイプライン溶接など、イノベーションがいかに人類のエネルギーの扱い方を変えてきたのかを、それらイノベーションに関わった技術者や発明家の個々の物語をベースに組み立てていく。

    無名科学者の挑戦から読み解く『エネルギー400年史』 - HONZ
  • 『暴力と不平等の人類史: 戦争・革命・崩壊・疫病』平等は破壊の後にやってくる - HONZ

    ものすごいだ。まずはページ数。索引と原注だけで141ページ。文582ページ。重い。 次は帯。「核戦争なき平等化はありえるか?」という文章が美しい縦書きで書かれている。不意をつかれてギョッとする。横書きには第二次世界大戦、毛沢東の「大躍進」、欧州のペストという千万人単位が死亡した事件の結果として起こった平等化、生活向上、賃金上昇などの例を上げている。さらにギョッとする。 あまりに分厚いので、とりあえず序章と第4章「国家総力戦」を試し読みしてみた。第4章は明治維新以来の日の不平等の激化と戦争による解消だ。浅学な評者としては概ね正確だとしか評価することはできないが、これだけでヘタな新書一冊分の情報量がある。 もちろんトマ・ピケティの総括にも触れており、その検証も行っている。トマ・ピケティの総括とはすなわち 「かなりの部分まで、20世紀の不平等を緩和したのは、経済的、政治的な衝撃を伴う戦争

    『暴力と不平等の人類史: 戦争・革命・崩壊・疫病』平等は破壊の後にやってくる - HONZ
  • 人文文化と科学文化の融合──『なぜ脳はアートがわかるのか 現代美術史から学ぶ脳科学入門』 - HONZ

    なぜ脳はアートがわかるのか。そんなことをいうと、「いや、そもそも自分にゃさっぱりアートはわからねえ」という人がわらわら湧いて出そうだが、かくいう僕もそのタイプ。真四角の図形をぽこぽこ置いて、赤だの黄色だので適当に塗ったとしか思えない絵が抽象絵でありアートなのだと言われても素人が作ったものとの違いがよくわからないことが多い。 だが、ある意味ではそういう人たちにも読んでほしいだ。これを読むと、なるほど、確かに人間は、そうした一見意味がよくわからない抽象的なアートを「わかる」ことができるのだということが、脳科学的な観点から理解することができるようになる。また、普段からアートを楽しんでいる人たちも、ターナーやモネ、ポロックにデ・クーニングなど無数の画家の作品と脳についての知見を通すことで、一つの解釈として楽しむことができるだろう。著者のエリック・R・カンデルは記憶の神経メカニズムについての研究に

    人文文化と科学文化の融合──『なぜ脳はアートがわかるのか 現代美術史から学ぶ脳科学入門』 - HONZ
  • 文学を語ることばで科学を語る。『科学する心』 - HONZ

    「あまりに面白くて一晩で一気に読み終えました。この広大なテーマでエッセイを書ける人は他にいません」。池澤夏樹・著『科学する心』の帯に書かれた吉川浩満さんの推薦文です。文学者のことばで科学を語るエッセイ集として話題になっている『科学する心』。このの刊行記念として、三省堂書店池袋店の主催で行われた池澤夏樹さんと吉川浩満さんの対談イベント(4月25日)の模様をダイジェストでお届けします。(HONZ編集部) 池澤:今日はまず、吉川さんに御礼を言わないといけません。このを出す前に、何かとんでもない間違いをしているんじゃないかと心配になって、ゲラをお送りして、目を通していただきました。いわば学術的な査読をお願いした。実際、あちこちにあった間違いを教えていただき、そのおかげで無事に出版できました。大変ありがたいことでした。 吉川:すごく面白くて、一晩で一気に読みました。すぐに編集の方にメールを送っ

    文学を語ることばで科学を語る。『科学する心』 - HONZ
  • 医師にも患者にもバイアスだらけ 『医療現場の行動経済学』 - HONZ

    京都大学の庶佑特別教授のノーベル医学生理学賞受賞が決まり、日中が湧いている。この素晴らしい快挙の一方で、医療現場では混乱も生じているようだ。がん治療の現場で、医師が手術を選択したにも関わらず、患者側からオプジーボを使用したいと相談があるようなのだ。なぜ、患者側はそう考えるのか。書は、その「なぜ」に答えるである。 当然のことだが、医師はオプジーボの存在は知りつつ手術を選択している。冷静に考えれば、患者もそれはわかるだろう。しかし、生きるか死ぬかの瀬戸際で、毎日のように「オプジーボで命を救われました」という報道を目にしている患者の気持ちもわかるような気がする。 このような医療現場の意思決定について、現在の医療ではインフォームドコンセント(説明と合意)という手法が一般的にとられている。しかし、情報さえ提供すれば、患者は合理的な判断をできるのだろうか。書の執筆チームは、ここに昨年ノーベル

    医師にも患者にもバイアスだらけ 『医療現場の行動経済学』 - HONZ
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    fandango_track0212 2018/10/09
    これ買う
  • あなたはなぜ特定の色を好むのか?──『好き嫌い―行動科学最大の謎―』 - HONZ

    あなたは何色が好きですか? と聞くと大抵の人はペラペラとこんな色が好きですと答えてみせる(僕は灰色だ、地味だから)。初対面同士の飲み会ならなんか嫌いなものorべたいものでもあります? と聞くものだし、映画小説など、作品を鑑賞する際にも、好みは密接に関わってくる。巨大人型ロボット物は嫌い、という人もいれば巨大人型ロボット物ならなんでも大好き! という人もいるものだ。 その違いはなぜ発生しているのだろうか? べ物に関してはアレルギーなどがあるだろうが、そうでない場合は何が関係しているのか? 育ってきた環境の違いか、進化論的に脳に組み込まれているのか? 日々の選択は現在、未来の嗜好にどのような影響を与えていくのだろうか。ひょっとしたら、好き嫌いは完全にただの思いこみだったりするのかもしれない。書『好き嫌い―行動科学最大の謎―』はそうした好き嫌いに関連した行動科学についての一冊である。 た

    あなたはなぜ特定の色を好むのか?──『好き嫌い―行動科学最大の謎―』 - HONZ
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    fandango_track0212 2018/06/28
    面白そう
  • 『月をマーケティングする』PDCAを回し続ければ、人類は火星に行けるのか。 - HONZ

    人類がまだ火星に行っていないのは、 科学の敗北ではなくマーケティングの失敗なのだ。 ここ数週間、書のオビに書かれていた言葉が頭から離れない。だが、こう言われて気を悪くするマーケティング関係者などいないだろう。叱咤されているようでもあり、持ち上げられているようでもあり… 1969年7月20日午後10時56分20秒。その時代に生きていた人なら誰もが、その時どこで映像を見ていたのか、克明に憶えているとも言われるアポロ計画。イーグル号が月面着陸して人類の足跡が月面に刻まれる様子は、世界中の人によってテレビやラジオで見守られた。 書はこの科学的偉業を、史上最大にして最も重要なマーケティング・PR活動として紹介した一冊である。科学や技術が事足りていたとしても、世の中にそれが受容され、自分事化されなければ、後世に語り継がれるどころか、事を成し遂げることすら難しい。科学の裏側で見落とされがちな社会史的

    『月をマーケティングする』PDCAを回し続ければ、人類は火星に行けるのか。 - HONZ
  • 『ゼロ・トゥ・ワン』 - この面白さを、スタートアップ界隈に独占させるわけにはいかない - HONZ

    成功者が書いたビジネスほど、警戒して読まねばならぬものはない。それがHONZの基スタンスであることは分かっているのだが、ものの数ページほどで陥落した。あまりに面白くて、もう10回以上は読んだと思う。 大学生くらいの時にこのに出会っていたら、もっと違う人生があったのかもしれない。でも今だからこそ、このに書かれていることを理解できるのかもしれない。そういうモヤっとした心のざわめきを呼び覚ましてくれる一冊だ。 著者のピーター・ティールは、PayPalの共同創業者であった人物。その後、FacebookやSpaceXを含む数百社のスタートアップを支えた投資家としてもよく知られる。 書は、スタンフォード大学で講義した起業論の内容がベースになったという。スタンフォードやシリコンバレーだけに未来を独占させていいわけがない ーー そんな思いが出版の契機になったそうだが、この面白さをスタートアップ界

    『ゼロ・トゥ・ワン』 - この面白さを、スタートアップ界隈に独占させるわけにはいかない - HONZ
  • 『警察の誕生』 - HONZ

    『警察の誕生』 菊池 良生 集英社新書 (2010/12/17) 警察が、司法と分離している必然性はない。 過去には捕まえた時点でその人を裁く事が出来た時代もあった。恐ろしい話だ。 中世ゲルマンは最も恐ろしい。正々堂々と闘いを挑んで殺した分には「障害致死罪」であった。 自分を守るのは自分、極めてシンプルである。警察は、体制の転覆を防ぐ公安でしかなかった。 そこから見たら、むしろ現代の警察が奇跡である。警察はなぜ、「お巡りさん」をするようになったのだろうか? 書は警察の歴史を紹介しつつ、古代ローマ、中世・近代のウィーン・パリ・ロンドンの生活等を描く。それは外敵との闘いの歴史でもあるし、自治都市と王族の闘いの歴史でもあるし、ペストとの闘いの歴史でもある。パリって汚かったんですねえ。そして、外敵と戦うためには警察が必要なのであった。集団で戦えるよう、内部の組織を整えるのだ。 個人の自衛から城塞

    『警察の誕生』 - HONZ
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