(1)ほんとはなにか。 僕が学生時代だった1970年前後、書店は、得体の知れない密林だった。そこには、何のために存在しているのかよく分からない物体が並んでいた。もちろん、実用書やエンターテイメントの本や雑誌が大半なのだけど、中には、聞いたことのない学問領域や、普通の人間には永遠に縁がない世界についての克明な案内があったり、人間として決定的な軸がズレているだろうと思われる著者の書籍なども並んでいた。そして僕は、その「何のためにあるのかよく分からない本」に不思議な魅力を感じ、書物の旅を開始した。 最近の本屋がつまらないのは、書名と装丁を見ただけで、何を目的に作られたのかすぐに分かってしまうからではないか。それは、読み手の僕の方が、新しいものを発見する視座を失っているからなのかも知れないが、80年代ぐらいから、書店に並ぶ本が、あらゆる意味で「実用書」になってきたことに違和感を感じていた。 僕の師
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