◆今を映す鏡『新訳 マクベス』 シェイクスピアの作品は数多く舞台で経験し、自分で演出もしています。僕にとってシェイクスピアはとても大きな存在です。まず言葉が美しく、役者として言ってみたくなるセリフがたくさんあります。演出家としての立場から言うと、どう料理しても崩れない。そして、どんな時代でも世の中を映す鏡になり得る普遍性を持っている。今さら僕が言うまでもないことかもしれませんが、やはり天才のなせるワザだと思いますね。 シェイクスピアはルネッサンス期をまたいで活躍した作家なんですね。ルネッサンス以降の時代では、近代的「自我」というものが重要なテーマになってくる。それに対して、ルネッサンス前の中世の人間は森羅万象を恐れ、まだまだ神仏への信仰が強い影響を持っている。両方の時代感覚を内包しているところもシェイクスピアの魅力のひとつだと思います。 今回おすすめする『マクベス』は、昨年、僕が演出・