2015-02-01 テリー・イーグルトン『シェイクスピア』より 本書を読んで、まず驚いたのは、「『マクベス』のなかで肯定的な価値は、もっぱら三人の魔女たちの側にあるということだ。この劇のなかで魔女は、れっきとしたヒロインである」という指摘である。 こういう読みは、私には全然思いつかなかった。 《魔女たちは、両性具有であり(魔女たちには髭がある)、重層性をそなえ(魔女は三人で一組)、そして「不完全な語り手(イムパーフェクト・スピーカー)」である。》 魔女たちは、マクベスのなかに眠っている野望を目覚めさせる。魔女たちは階層社会秩序の安定をゆさぶる野望を触発することで、秩序を神聖視する姿勢のなんたるかを赤裸々に暴きたてる。つまり社会は、ひと皮むけば、日常茶飯事化した暴力と、いつはてるともない戦乱をかかえこんでいるのだから、社会秩序への敬意などというものは、社会の真の姿を覆いかくす欺瞞にすぎ