近所に住んでいたタカちゃんのお父さんが亡くなったとき僕たちはまだ小学一年生だったけれど、タカちゃんの家を取り囲んだパトカーや救急車の騒々しさと、普段は陽気なタカちゃんがお地蔵様みたいになっているのと、周りの大人たちの不穏な空気から、その死が普通じゃないことはなんとなくわかった。1980年(昭和55年)の初夏の出来事だ。当時、タカちゃんのお父さんは30代の半ば。平日の夕方、僕たちと遊んでくれる優しいおじさんであり、大きな友達だった。彼が病気で療養していたのだと気付くのはずっと後のことだ。どういう方法で命を絶ったのか僕は知らない。タカちゃんも知らなかったのではないか。ベーゴマ。メンコ。チョロQ。ルービックキューブにガンプラ。子供だったからだろうか、タカちゃんのお父さんについての楽しい記憶は断片的。バラバラで繋がっていないのだ。顔や声も思い出せない。ただ、身近で遊んでくれた人間が普通じゃない亡く