1947年、ノルウェー人学者のトール・ヘイエルダールは、自作のイカダ「コン・ティキ号」で当時未解明だったポリネシア人のルーツをたどる旅に出た。漂流中はトビウオやカツオなどの魚に恵まれた一方、「エビと消しゴムを混ぜた味」と船員を悩ませた海洋生物がいた。作家の椎名誠さんが解説する――。 ※本稿は、椎名誠『漂流者は何を食べていたか』(新潮選書)の一部を再編集したものです。 無人島から生還できるのは極めて稀 漂流記には大きくわけて2つのジャンルがある。もっとも多いのは航海中に猛烈な嵐に遭遇し、船が壊滅的に破損してしまうケース。嵐の場合はある程度の予測はできるからそれに備えて防備をほどこせるが、どうしようもないのがクジラやシャチなど思いがけない海の巨大生物といきなり衝突し、船が破損してしまうアクシデントだ。夜中にそんなことがおきるのは想像するだけで恐ろしい。 どちらもライフラフトなどの救命ボートに逃