バックナンバー 僕は走る練習が苦手だった。選手には、陸上競技でも長距離ランナーと短距離ランナーの体が違うように、サッカー選手にも「自分の体」というものがある。1964年の東京五輪では、選手村で陸上選手の練習をジーッと見ていたことがある。100メートルで当時世界タイ記録の10秒0で金メダルに輝いたボブ・ヘイズ(米国)は、腕と足が丸太ん棒のようだった。逆に、マラソンで優勝したアベベ(エチオピア)は、ふくらはぎが腕のように細かった。そういう意味でいうと、僕はいわば、短距離の選手だった。長距離は走れない体だった。 20歳の時だった。千葉県の東大検見川グラウンドで、日本代表の合宿があった。毎日のように、周辺の丘陵地を走るクロスカントリーが練習メニューにあったが、僕はいつもビリだった。「まじめに走れ」と言われたが、「まじめに走っています」と答えるしかなかった。 インターバルを置きながら一定の距離