■「科学的」読み解きに限界も 『銃・病原菌・鉄』のベストセラーで知られる著者は、そのとてつもない大風呂敷という点において、真に「知のエンターテイナー」の名に値する。本書は彼の初期著作である『セックスはなぜ楽しいか』なる直球タイトル本の改題文庫版である。 男女の違いを生物学的に解き明かした、という触れ込みの本には常に一定の読者がつくし、ましてあのダイアモンドの著作となれば、ヒットは約束されたようなものだろう。 生物学的に見れば、人間の性は不合理きわまりない。(1)長期的な男女のペア関係、(2)夫婦共同での子育て、(3)ほかの性的カップルとの協力、(4)密(ひそ)かに行われる性交、(5)排卵の隠蔽(いんぺい)、(6)女性の閉経、などなど。著者はこうした特徴を、進化論的視点からさまざまに解釈を試みる。 評者はこの著者の“芸風”を、文化や文明の起源をひたすら“科学的に”語ろうとすること、と考えてい