それはまさに、油の中でハーモニーを奏でる黄金色の「宝もの」……。 まやかしの日本食レストランが増殖するフランスで、天ぷらを想い、天ぷらに恋い焦がれるフードジャーナリストによる「本物の天ぷら」体験記。 私には長年愛用していたUSBメモリーがある。8センチくらいの大きさのシリコン製で、海老の天ぷらの細長い形状と、その黄金色を忠実に再現したものだ。 天ぷら──それは日本料理の代表格とも言える料理で、サクっとした軽い衣でシンプルに食材を揚げる。とはいえ、このUSBは食べられるわけでもなく、数ギガバイト分の写真とドキュメントを保存して、ポケットの底で左右に揺られているのがせいぜいだった。 オンラインで見つけたそのUSBメモリーは、趣味の悪い小物を好む私のセンスを世間に晒すという役割だけでなく、取り出す度に、人からちょっとした反応を引き出す効果も持ち合わせていた。好奇心を持って好意的に支持してくれる人