作家の村田沙耶香には「イマジナリーフレンズ」、空想上の友達がいる。子供の頃からの長い付き合いだ。 村田は親から、料理をするよう、「女の子らしく」振る舞うように教えられて育った。そうすればいつか、お金持ちの男性と結婚できるから、と。「身体も、人生も、自分のものだとは思えませんでした」と村田は語る。だから、イマジナリーフレンズと一緒に宇宙船に乗って、自分の居場所だと感じられるような惑星に飛んでいくことを夢見ていた。 村田は一貫して、「普通」とは何かを問いかけ、家族の在り方を疑問視する物語を綴ってきた。そうした作品は、彼女自身が生まれ育った保守的な国・日本で多くの共感を呼んでいる。半自伝小説『コンビニ人間』は2016年に芥川賞を受賞。すでに30ヵ国語以上に翻訳され、売り上げは150万部を超えた。 村田の小説は、日本文学の翻訳作品の新時代を切り開いたと言える。『コンビニ人間』の英訳版が出版されたの