欧米で日本酒が着実に広まりつつある背後には、海外進出を果たした地酒メーカーの地道な努力がある。「清酒 明石鯛」を醸す明石酒類醸造を仏紙「ル・モンド」が取材している。 45歳を過ぎてからの挑戦 予言者郷里に容れられず──。いまの日本酒をめぐる状況を見事に言い当てているかのような言い回しである。日本酒は、西洋文化におけるワインと同じように、日本において古い歴史を持つものなのだが、この20年ほどは、日本国内で敬遠されてきた。日本酒に魅了される欧州のワイン愛好者の数が増えているのとは対照的なのである。 2019~2022年の期間に日本からフランスに輸出された日本酒の量が3倍になったのに対し、同期間、日本国内での日本酒の消費は20%も減った。 この日本酒の消費傾向に対応して、自分たちを変化させている小さな蔵元がある。酒どころの兵庫の明石酒類醸造である。この蔵元は、国内市場を遠く離れ、西洋の文化や慣習