ベストを目指しつつ最悪に備える 大統領になった当初、私は、ソビエト連邦が解体した後に健全な経済と正常な民主主義をつくろうとするボリス・エリツィンの努力をサポートすると約束した。だが同時に、ワルシャワ条約機構に加盟していた国やソ連の一部だった国も含めて、NATOを拡大することも約束した。 私の政策は、最悪の事態に備えつつ、ベストな状況を目指すものだった。ロシアが共産主義に戻る心配はしていなかったが、「民主主義」と「協調」を帝国への野望に変えてしまう、ピョートル大帝やエカテリーナ2世のような過激なナショナリズムが復活してしまう心配はあった。 エリツィンがそうなるとは考えていなかったが、エリツィンの後にどうなるのかを予測できた人はいなかったのではないだろうか。 ロシアが民主主義と協調を目指す道にとどまるなら、テロや民族・宗教などの間の衝突、および核兵器、化学兵器、生物兵器の拡散など、現代の安全保