仏教には心のケアというテーマはない 最初に申し上げておきたいことがあります。それは「心のケア」は、そもそも仏教の課題ではない、ということです。 何しろ世間一般にいわれる「心の悩み」というのはほとんどが現代病で、お釈迦さまの時代にはなかったのですから、仕方がないのです。 昔の人々にはそれほど精神的な病気がなかったのです。なぜかというと、自然の中で生きていたことで「ものを認める」ということが、生活の中でできていたからです。「もの」というのは、生きている間に出会うさまざまなできごとのことですが、現代に生きる我々はそれを認めません。自分に都合の悪いことは何一つ認めたくないのです。 「自分の手で全部コントロールできる」高慢さが招く心の病 台風が来ても被害が出ることは認めたくなくて、どうにかして防ごうとします。地震が起きても人が死ぬのは認めたくなくて、どうにかしようとします。病気が見つかると、それもま