1975年。写研は創業50年周年を迎えた。「写植のうた」がつくられ、記念誌などが発行された。そして、その後の写研を担うことになるふたつの書体が発表された。ひとつはゴナU、もうひとつは「本蘭細明朝体」である。 「本蘭細明朝体」は、橋本和夫さんを中心に制作された。橋本さんは私が師と仰ぐ方で、写研のほとんどすべての書体の監修をされていた。「本蘭細明朝体」はその後のファミリー化によって、「本蘭明朝L」と呼ばれるようになった。 私が入社したのは1977年なので、すでに本蘭細明朝体(本蘭明朝L)は発売されていた。新入社員の研修では石井細明朝体を実習したが、本蘭細明朝体(本蘭明朝L)も、石井細明朝体と比較しながら、その書体の背景、特徴などを教えられた。 石井細明朝体と本蘭細明朝体(本蘭明朝L)との比較によって、近代明朝体を基本的な考え方を理解していったように思う。 ●サプトンのために 本蘭細明朝体(本蘭