作文教育といえば読書感想文や運動会などの行事作文や生活作文、そうでなければ大学入試の小論文、という経験をお持ちの読者にとっては、「作文教育とテクノロジー」という組み合わせは奇妙に思えるかもしれない。しかし、文章を書く営みは常に何らかのテクノロジーを用いるので、作文教育とテクノロジーは、切っても切れない関係にある。 たとえば、「生活を見つめることで思考力を伸ばす」ことを意図した大正期の生活綴方運動を推進させた条件の一つには、筆と和紙または石板に石筆で書くことから、ノートに鉛筆で書くようになった筆記具の変化があった。安価な鉛筆と消しゴム、洋ザラ紙の普及により、事前に書く内容をメモすることや、書きながら考えることや、下書きを推敲して清書するということが可能になり、筆やペンの時代には主流だった「書き出しで大意を述べる」というスタイルにも縛られなくなっていったという指摘もある。つまり、現在の作文教育