国語か道徳の教科書で一度はお目にかかるこの作品。 みなさんは太宰治の短編「走れメロス」にどのような印象をいだいているだろうか。 角川文庫から出ている『走れメロス』の背表紙ではこう評されている。 「身命を懸けた友情の美しさを描いて名高い」 少なくともきちんと大人になって再読するまで僕はこの作品にこういう感想をもっていたし、おそらく多くの人がそうだと思う。 すなわち精悍な主人公が友情のために命を投げ出す美談として。 しかし疑問に思ったことはないだろうか。 『人間失格』を書くようなあのナルシズムと自己嫌悪の間で揺れる大変いやらしい性質の作家太宰が、「身命を懸けた友情の美しさ」なんか描いて喜ぶもんだろうかと。 さて、最近になってこの短編「走れメロス」を再読して、僕は1つの確信を得た。 というのは、この作品は明らかに「バカ話」と意図して書かれている、ということなのだ。 そこで今回はこの作品がいかにバ
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