【寄稿】 地域に軸足を置いた抗菌薬適正使用を 林 俊誠(前橋赤十字病院感染症内科 副部長) ある地域の病院があらゆる院内感染対策に注力した。しかし,耐性菌に苦しむ患者は一向に減らなかった。院外にも軸足を置いて対策を広げたら,まさか,耐性菌が減り始めた――。 今からちょうど30年前に『院内感染』(河出書房新社,1990年)という書籍が出版され,以来,耐性菌を広げない感染管理や耐性菌を作らない抗菌薬適正使用に目が向けられる時代となりました。しかし,「院内」の感染対策に注力するだけでは,病院の耐性菌は減らせません。「院外」,すなわち地域全体での抗菌薬適正使用に着目すべきです。 例えば,当院の全入院患者に抗菌薬を使用したとして,その人数は最大でも1日に555人です。しかし医科・歯科の診療所が大部分を占める,当院の登録医640施設の外来ではもっと多数の患者に抗菌薬が処方されている可能性があります