ベラルーシのミンスクにある甲状腺センターでは、1986年のチェルノブイリ原発事故で発生した放射性降下物に曝露して甲状腺に深刻なダメージを受けた患者の治療が行われている。(PHOTOGRAPH BY GERD LUDWIG, NAT GEO IMAGE COLLECTION) チェルノブイリ原子力発電所の事故から今年で35年。事故が人々の遺伝子に及ぼした影響を徹底的に調べた研究結果が、4月22日付けで学術誌「サイエンス」に発表された。その2本の論文で明らかになった詳細は、私たちの不安を和らげるような内容だ。 1986年4月26日の朝、現在のウクライナ北部にあったチェルノブイリ原発の原子炉が爆発・炎上し、史上最悪の原子力事故が発生した。激しい火災で雲のようにわき上がった放射性物質が降下して周辺地域に住む人々の肺に入り、家や畑や牧草地に積もり、食べ物などに入り込んだ。ある原子力技術者の言葉を借り