戦国時代を戦国大名の分立的状況から天下統一へと至る過程として捉える一国史的立場に対して、東アジアの中に日本の戦国時代を位置づける見方も、近年非常によく見られるようになってきている。本書では、天下統一という志向とは一線を画した、大内、大友、松浦、島津、相良など西国大名のアジア志向について、彼らの交易と人々の流れの中で描こうとした一冊である。 室町時代に行われた日明貿易、合計十九回の遣明船が送られたが明応の政変(1493)以後幕府権力が弱体してからは、細川氏と大内氏の主導権争いを経て遣明船は大内氏が独占、大内氏の滅亡以後日明貿易は絶えた、ということになっているが、本書ではこれを「狭義の遣明船」とし、十六世紀以降、細川・大内氏だけでなく有力西国大名が次々と遣明船を送っていることを明らかにする。 各大名、とりあえず遣明船を送り、現地で明政府から朝貢貿易・公貿易として認められれば良し、そうでなければ