『大川周明』 松本健一 いきなり「大川周明の不人気」という話題から入ります。 例えば大川周明の「ライバル」北一輝。知名度という点ではほぼ同程度でしょうし、普通の教育を受けた日本人でこの二人の名前を知らない人はいないでしょうが、カリスマ的人気という意味では雲泥の差があります。 北一輝が良くも悪くも「激烈なる革命家」な悲壮感を漂わせているのに対し、大川周明で有名なのは、極東軍事裁判で東条英機の頭をポコンとやって松沢病院送りになった、というちょっとコミカルなエピソードばかり。詐病説もあり、A級戦犯でありながら気の触れたフリでおめおめと生き延びた、というイメージもあります。 しかし現代の「革命家」は、「カッコイイ革命家」(左翼にとっては「傲慢な大陸浪人」)北一輝より、「コミカルなまでのアジア主義者」大川周明に参照点を見出して頂きたい。注目する理由の一つは、正にそのコミカルさ自体ですが(後述)、もう