リンクは自由! 『日本語学』第22巻(2003)4月臨時増刊号「コーパス言語学」, pp.6-15 掲載 言語理論と言語資料 ―コーパスとコーパス以外のデータ 後藤 斉 1. コーパスとは何か 言語の研究に関して「コーパス」ということを目にすることが増えているが、 その概念の理解は必ずしも十分に広まっているとはいえない。まずそれを 整理しておくことが必要であろう。 「コーパス」という語は英語のcorpusに由来し、これはさらにラテン語 corpus「体」(発音はコルプス)に発する。この語は文字通りの意味から転じて、 比較的早くから『ローマ法大全』Corpus Iuris Civilisのように「資料の総体」を 意味して使われ、この用法でヨーロッパ各国語に取り入れられた。特定のテキスト (音声言語を転写した資料を含む)のみに依拠して研究が行われるような場合には、 それをその研究におけるコーパ