情報化時代の「ものづくり」の小規模化、個人化は私たちの社会にどのような影響を与えるのか。 文: 宇野常寛 いま国内で再び「ものづくり」が注目を集めている。もちろんそれは昭和の製造業がジャパン・アズ・ナンバーワンの時代を取り戻しつつある、といったことではない。どちらかといえば逆の話で、家電ベンチャーや個人事務所といった比較的小規模のプレイヤーが、ものづくりの世界で活躍し始めているのだ。こうした変化の背景にあるのは、まあ、ベタに言ってしまえばグローバル化と情報化である。たとえばパナソニックから「脱藩」した岩佐琢磨率いる家電ベンチャー、Cerevoは、グローバルニッチという戦略を取っている。1国では500個しか売れないニッチな製品も、世界中の数十カ国で販売すれば万単位の個数が販売できる。従来の考えではこれは極めて非効率な戦略だが、現在においては必ずしもそうではない。情報化によって数十カ国のニッチ