引き続きノアピニオン氏の実証研究ネタ。21日付ブルームバーグ論説で氏は、改めて理論に対する実証の優位性を訴えつつも、実証研究の結果は必ずしも確定的なものではない――特に経済学では――ことを踏まえて、そうした結果をどのように受け止めるべきか、について以下の3点を挙げている。 適度な懐疑主義 研究によって考えを変えるのは良いが、一つの論文を完全に信頼してはいけない。2つの論文の結果が一致したら、考えをもう少し変えてもよい。 研究の質に注意を払う すべての研究は平等ではない。 高名な学者の主張が怪しい手法に基づいていたら、おそらく経済学者や学術誌がそれを見つけて報告するだろう。 一般に、単純な相関に基づく論文は、自然実験を用いた論文に信頼性がかなり劣る。 マクロ経済学は労働や税制の経済学よりも本質的に困難なので、マクロの発見については特に眉に唾すべき。 怪しいと思うような前提に立っている研究につ
最近紹介した実証分析を巡る議論は、Russ Robertsの見たAutor-Dorn-Hanson論文を巡る論争が一つのきっかけとなっていたが、ノアピニオン氏が David Autorに直接取材したブルームバーグ論説を書いている。 If empirical studies can lead top mainstream economists to question this once-universal belief, then the profession really is shifting from theory to evidence. With this in mind, I recently contacted Autor to ask him how his research on China has altered his own thinking about the co
亡くなったケネス・アローが共著者に名前を連ねている表題のNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The Impact of Information Technology on the Diffusion of New Pharmaceuticals」で、他の著者はKamran Bilir(ウィスコンシン大学マディソン校)、Alan T. Sorensen(同)。 以下はその要旨。 How does information affect the diffusion of innovations? This paper evaluates the influence of physicians' access to detailed drug information on their decisions about which products to prescribe. Co
最近Douglas L. Campbellというモスクワ・ニューエコノミックスクールの准教授がブログを始め、Economist's Viewがそのエントリに良くリンクしているが、それらを読むとリフレ志向の人のようである。例えば初回の3/2エントリは以下のように結ばれている。 What the Fed has come to decide over time is not that they need to do more stimulative monetary policy, but that the economy can't grow like it used to. And given that the Fed can always make the economy grow slower if it wants, this situation has developed not
昨日、1月の全産業指数が公表になり、ようやく、公共工事が底入れした。崖のような状態だったが、断絶を挟み、補正予算の効果が出始めたようだ。企業設備の工事の増加は続いているものの、まだ埋め切れていない。建設の動きは、1月の消費活動指数が前月の落ち込みから戻したのと整合的である。また、2月の輸出は、春節の反動で大きく伸び、前月と均して堅調を保った。こちらも消費を浮揚させることになろう。 (図) (今日までの日経) 円一時110円台。保育受け皿 財源課題。住宅地9年ぶり上昇、低金利が支え。地方に波及、都心部は過熱警戒も。国債の応札義務引き上げ。介護職員の月給15%上げ。グローバル企業、税務公表。 ※保育所を使わず、現物給付を受けない人には、代わりに現金給付をするというようにしてバランスを取らないと、需要の過熱は収まらないのではないか。むろん、財源は年金で、前倒し給付から、子供を預ける人は保育料を払
Natureが「日本の科学研究はこの10年間で失速していて、科学界のエリートとしての地位が脅かされている」と警鐘を鳴らしています。 Nature Index 2017 Japan 本日公開! @ochyai 先生がカバーを飾ります。研究が失速するいま、鮮烈なひらめきが求められる! https://t.co/fLb2MPTLQk #NatureIndexJapan pic.twitter.com/KAWoD9Xf1u — Nature Japan (@NatureJapan) 2017年3月23日 その主因は カネをケチっている 競争促進・成果主義・短期主義*1 と考えられますが、その背景には日本経済の凋落があります。 日本の名目GDPは1997年から成長を停止しています。 ドル換算GDPが減少している国は日本だけです。*2 ちなみに、ブービー賞はガンビアです。こんな国にも劣る最下位という意
国有地売却及び小学校の設置認可に政治関与が無かったかが国会で追及されている森友学園問題だが、政治家や財務官僚などに政治関与が無かったか聞いて回ると言う茶番になっている。自ら関与があったと言うはずがなく、もう少し客観的な証拠を固める方が建設的だ。国有地売却価格が適切であったかについてまだ決着がついていないので、そこの関連部分を攻める方が適切であろう。見積もりが不適切である事を証明できれば、官僚の怠惰と政権与党の不監督もしくは政治関与のどちらかがあった事になる。 見積もりの適正さは、地下3mより深いところにあるゴミの分量が撤去費用8億1900万円相当分あるか否かにかかっている。2009年から2012年までに見つかった深さ3mまでの廃材と生活ごみは2015年7~12月に森友学園が除去し、その除去費1億3176万円を国が負担したそうで、8億1900万円は工事で杭を打つ際に見つかった深さ3m以下のゴ
エコノミストの安達誠司氏が『「シムズ理論」が日本経済のデフレ脱却に有効である理由』と言うエッセイを書いているのだが、あまりFTPLを理解していないようなので突っ込んでおきたい。数理モデルを確認せずにその解説文をつなぎ合わせてFTPLを理解しようとして、失敗した気がする。 1. 頑張ってFTPLを説明する必要は無い 将来、ガンガンと増税してくると思われているから物価が上がらないので、そこそこしか増税しないと思わせたら物価が上がると言うのがシムズ教授の提言*1。シムズ教授はマクロ経済学の文脈でコレを言うために、政府と家計の予算制約式と横断条件から物価水準を決定する理論モデル(FTPL)を持ち出し、政府純負債の実質価値と財政余剰(=財政黒字+通貨発行益)の現在割引価値の予測値が一致するように物価水準が定まることを確認しているのだが、シムズ提言だけに関心があるのであれば割愛しても問題ないであろう。
昔の紙幣は兌換銀行券と言って、金や銀などの貴金属との交換が保証されたものであったから、中央銀行にとって発行した紙幣が負債であるのは明白であった。一方、現在、日本銀行が出している紙幣は不兌換で、法的に何かの返済義務を負っているわけではないから、その負債性が見えにくくなっている。償還日がない発行済紙幣は、日銀のバランスシートの負債ではなく純資産(資本)に計上すべきと言う声もそこそこ聞かれるぐらいだ。しかし、日銀が状況に応じて日銀券の回収を行なう義務を負っているからこそ、日銀券の価値と機能が維持されている。だから、日銀券はやはり負債と考えるのが適当だ。 日銀券に負債性があるのは、銀行券の価値の安定のために、適時、国債を主とした金融資産で日銀券を回収することを予定しているからだ。インフレ率を制御するために通貨供給量をコントロールする必要があるわけで、通貨供給量、つまり発行済日銀券は放置しておいて良
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