出会い 『天保そば』との出会いは、平成十一年、当時鈴木製粉社長・故鈴木彦市氏のもとに、一握りの「ソバの実」とともに一通の手紙が届いたことにはじまります。手紙には「『天保そば』かもしれないものです、よろしく発芽試験お願いいたします」という文面が添えられていました。 ソバの実は、福島県大熊町の横川一郎さん(当時八十四歳)方の旧家を解体した時に、屋根裏で見つかった俵に大切に保管されていたものでした。俵は三重で、俵と俵の間には木灰(あく)が詰められていました。 鈴木氏がソバの実を手のひらにのせ、はじめて観察した感想は、「乾燥や傷みがひどくてとても発芽するとは思えない」というものでした。間もなく、鈴木氏のもとに種子を送ってきた友人から、大学や研究機関に依頼した発芽テストでは「すべての種子で胚は発芽活性を喪失、成長能力は無い」という報告が届いたという連絡がありました。しかし、鈴木氏は一縷の望みをかけて