渡邊真由美 福島学院大学短期大学部(非常勤) Theodore DreiserのSister Carrie(1900)は、中西部出身の田舎娘が都会に出て、マッシャー(a masher)と呼ばれる世慣れた男性に誘惑され、結婚しないまま同棲をはじめるという誘惑小説の系譜にある小説である。だが、19世紀にもてはやされた誘惑小説と違って、CarrieはFrank Norrisなどから高い評価をうけたものの、当時の出版社や一般の読者に受容されることがなかった。本発表は、なぜCarrieが受け入れられなかったのか、という疑問に端を発し、Carrieが誘惑小説の体裁をとりつつも、誘惑小説の物語が強化しようとする社会体制を揺るがす仕掛けをもつことを明らかにしようとするものである。 Laura Hapke は、Sister CarrieをCarrieがシカゴへ出て初めて勤めた靴工場の同僚の女性労働者に注目し